囲碁の中国ルール(2002) 試訳
前記:中身に略あり。括弧内の内容は訳文に対する説明。
第1章 総則
1条 囲碁の道具(略)
1.碁盤 2.碁石
2条 打ち方
- 両者はそれぞれ黒番と白番を持つ。
- 石1つもない盤面から始める。
- 黒番が先である。両者は1手ずつ石1つを交点の上に置く。
- 置いてあった石は移動できない。
- パスはできる。
3条 石の呼吸点
盤上にある1つの石にとって、線で隣接する交点の目は、石の「呼吸点」である。(中国語では「気」という)
線で隣接する交点に同色の石が置いてあると、石たちが一体化となる。
線で隣接する交点に異色の石が置いてあると、そこの呼吸点がなくなる。全ての呼吸点がなくなると、石は盤上に生存することができない。
4条 石の取り
呼吸点のない石を盤上から外すことは「取る」と言う。以下に二つの場合がある。
- 着手すると、相手の石に呼吸点がない場合、次第にその石を取る。
- 着手すると、両者の石は同時に呼吸点がない場合、次第に相手の石を取る。
5条 禁じ手
片方がもし着手すると、自身の石に呼吸点がなくなり、且つ相手の石も取れない場合、その交点への着手は禁じられる。
6条 同形反復禁止
着手により、盤面がすでに現れたことのある形に戻ってはならない。
7条 終局
- 着手はもうないと、両者が合意しては、終局となる。
- 片方が投了した場合、終局となり、勝負結果も決まる。
- 両者が連続パスした場合、終局となる。
8条 石の死活
- 終局後、両者の合意によって、取れない石は活き石である。
- 終局後、両者の合意によって、取れる石は死に石である。
9条 勝負の計算
対局終了後、投了ではない限り、両者の領有している面積で勝負がつく。全ての死に石を盤面から取り除き、活き石とその石で囲んだ交点の合計を数えると、領有が分かる。(単位は中国語で「子」という)
両者の活き石の間のダメは、折半して両者の領有に分ける。
碁盤定数の半分は180½単位であるため、片方の領有だけを数え、過半数を確保した者は勝ちとなる。両者は同じく半数の180½単位であれば持碁になる。
コミ出しのある手合は、11条を参照。
第2章 手合規定
10条 先番の決め方
先番は、事前に決まるか、あるいはニギリで決定する。
以下はニギリの進行である。
段位の高い側が白石をニギる。段位の低い側が黒石1つか2つを出し、奇数か偶数かを当てる。黒石を出した側が当てたら黒番を持つ。同じ段位の場合、年長側がニギる。
11条 コミ出し
黒番がコミを出す。勝負を計算するときに、3¾単位は黒の領有から引いて、白の領有に足す。よって黒番の過半数は184¼単位を超え、白番の過半数は176¾単位を超えることになる。
以下に例を挙げる。
黒は185単位であれば、よって白は176単位であり、黒は¾単位の勝ちとなる。
黒は184½単位であれば、よって白は176½単位であり、黒は¼単位の勝ちとなる。
黒は184単位であれば、よって白は177単位であり、黒は¼単位の負けとなる。
12条 持ち時間
1.時計(略) 2.持ち時間(略) 3.秒読み*(略) *
4.時間切れ (前略)両者は領有を争奪するつもりはなく、終局もせずに無意味な着手を交わしている場合、審判員は対局を中止し強制終局することができる。(審判の介入および決定権)
5.そのほか(略)
13条 手合終了
7条のほかに、選手の不出場や、審判によって負けか無勝負とされるなどの場合も、終了となる。
片方が口頭で簡潔に「終わった」と表明し、相手に認めてもらうと終局となる。
14条 手合の中断と封じ (略)
15条 選手のモラルと対局場の風紀 (略)
16条 選手の権利と義務 (略)
第3章 審判
17条 着手について
- 手番のミス(略)
- 相手がパスと表明しないのに2手打ちした者に対しては、その2手目を無効とし、1回警告する。
- 時計(略)
- 時計(略)
- 対局中石がずれた場合(略)
- 対局中石がずれた場合(略)
18条 石の取りについて
- 間違って活き石を取ってしまった者に対し、石を盤面に戻し、1回警告する。
- 間違って死に石を取らず、あるいは取り残す者に対し、石を取り除き、1回警告する。
- 6条に違反した者に対し、その着手を無効とし、1回警告する。
19条 禁じ手について
禁じ手をした者に対し、着手を無効とし、1回警告する。
19条 同形反復禁止について
同形反復は原則、禁止とすべきである。
- コウ立てしないことは禁止である。
- 「仮生」(入仏の判決)などは禁止である。
- 「長生」、三コウ、四コウなどの超コウ、循環コウは原則禁止であるが、実戦進行の把握が難しいなどの状況を踏まえ、審議によって無勝負とすることもできる。
20条 終局について
- 終局を提案する側はパスする。確認してくれない場合、相手の番になる。対局は再開し、終局の合意が出るまで続ける。
- 終局後、無所属の交点は全てダメとする。
- 終局後、対局が再開しない限り、いかなる着手は許されない。
- 終局後、石の死活をめぐり、それぞれに両者の合意が必要である。合意ができない場合、対局は再開する。死に石と主張する者が先に着手する。
21条 持ち時間
- 1時間以上遅刻すると負けとなる。遅刻が1時間以内の者は、2倍の時間消費があったとみなされる。
- 両者ともに1時間以上遅刻した場合、両負けとなる。
- (略)
- (略)
- (略)
- 石を取ってから時計を押す。違反した者には時計を変えずに、1回警告する。
- 秒読みに入って離席する者は、相手の番の時でなければならない。しかも必ず審判員の許可を得たのである。そうでないいずれの状況は、秒読みは中断しない。
- (略)
- (略)
21条 対局場の風紀(略)
22条 警告
- 計1回警告された者は、1単位が勝負計算時に引かれ、相手の領有に充てる。
- 計2回警告された者は、負けとなる。
23条から33条(略)
范蘊若八段を偲ぶ
今日は范蘊若八段の命日である。
東京にいて訃報を受けた時、ちょうど自分も鬱と診断され、精神クリニックに月2回通っている頃だった。回復が順調になってきたのは、そもそも自分がADHDであり、コロナ禍で学生生活の日々に支障が酷くなるから発病したもので、状況がわかった上でドクターと一緒に対策を打てたのだろう。一番最初にクリニックを勧めてくださった大学相談室の先生方にも、大変お世話になっていた。
患者にはいつ、どこにいても、支えてくれる人がきっといるはず。范蘊若八段の件は、ただ発作が一番酷い時に、最悪の事態を防ぐことができなかったのだろうか。
甲級リーグ前シーズンの終わり頃、チームメートの胡耀宇八段が会見の場で泣いた。「きっと見守ってくれてた」と。人間なら誰でも、囲碁が人生の全てではない。その一方、生きるために何かを失い、犠牲にせざるを得ないことが苦しみとなるかもしれない。
蘊若氏、いつも想っているよ。囲碁界の方々も、皆頑張っている。
当時の報道により、私と同じくカトリック信者であることは初めて知った。蘊若氏が生前、宗教行事の参拝に行った時に、ご家族一同が映る写真は報道にあった。
兄弟姉妹の死は、もはや自分の死と同じ重みを感じる。決まったことは逆戻りできない。この一年間は、どうにか信者としてのあるべきスタンスがわかってきた。私は諦めないで頑張る。
いつか自分も死ぬその日まで、すでにこの世を去った人に対する思いを抱えつつ、生きていく。