中国ルールのうんちく(1) ~整地

仮に361枚の1円コインはテーブルにあって、2人がそれを取り合うゲームとする。全てのコインが取られた時点でゲームは終了。

両者が取ったコインは勿論、合計361円である。片方の数がわかれば、相手の数も次第にわかる

中国ルールの下に囲碁は、まさにそういったゲームである。盤上に361の交点があり、全ての交点が配分され、多く取れた方が勝ちである。囲んだ地足す生き石は自分の領有になり、片方の領有を数え、半分である181.5単位と比較すれば勝ち負けはわかる。整地しやすい、四角っぽい側を選べばよい。

では終局後、具体的にどういうふうに整地するのか。実際に操作の段取りを見てみよう。

こちらは第2回夢百合杯決勝第5局、柯潔vs李世乭。碁盤の交点は計361単位。

kifudepot|柯潔-李世乭 第2回夢百合杯世界オープン戦決勝五番勝負第5局

①まずは盤上の死に石をすべて取り除く。アゲハマという概念は中国ルールにないので埋まりなどは不要。

白陣のほうが視覚的に整地しやすいが、今回はあえて難しそうな黒陣を数える。

黒石と白石は等価交換できる(ここは日本ルールと同じ)。

必ず10目単位で四角い空き地に整える。これを実現するために石を自由に入れたり外したりする。これで空き地は110単位になる。

③残りの石を、わかりやすいように10個ずつ並べる。最後に端数があっても数えやすい。

黒石は計75個

*図では映えの都合で、白石は一部消えている。


②と③によって、黒は合計185単位であり、コミを引いても361の過半数を確保したため黒の勝ちとなる。

以下に整地する時の注意点:

  • 日本ルールと違い、地を空けるために石の入れ加減はできるし自由だが、いざ空き地を②で決めると、③にて石の数は確定である。

  • 向こうの陣地はさほど重要ではないが、③の前に形のままであったほうがよい。②で空き地を10の倍数でキレイに作るために、相手の領有と同じ数を交換する場合はよくある(日本ルールと同じ)。

  • トラブルが生じないよう、②が終わったところ、必ず碁盤外のテーブルにある全ての同色石を片付けておくこと。

19路盤ではコミは3.75単位である。7目半に相当する。 よって黒が184.25単位、もしくは白が176.75単位を超えると勝ちである。 整地後の結果をいち早く確認するのに、「黒185、白177確保」と覚えておけばよい。

セキの場合は、全てのダメは二分され、両者に充てる。


中国ルールの長所と短所は、整地の仕方から見れば分かる。

アゲハマ不要で、盤面の状況だけで勝負結果がはっきり分かるのは、中国ルールの長所である。アゲハマの会計は大変でトラブルのもとになりやすい。

整地によって盤面の形が完全に破壊されてしまうことと、操作の時間が長いことは、中国ルールの二つだけの短所と言える。ただし現在スマホを使ったら写真で自動的に勝負結果を示すアプリがあり、とても実用的で時短にできる。

ちなみに中国ルールでの整地は大会では対局者同士でするのではなく、審判がするのである。「整地は対局の一部」という考え方はない。