中国囲碁協会の昇段制度(2023年時点)

中囲協の規定はやや複雑である。

棋士が昇段するには、二つの方式がある。

  • 飛付き昇段

  • 公式戦の勝星

飛付き昇段

段位 条件
九段 国際棋戦で個人優勝
国際棋戦で個人準優勝計2回
国際団体勝ち抜き戦で3連勝
七段 中日、中韓のタイトルホルダー対抗で優勝
国際団体戦で4連勝
女流棋士の段位 条件
五段 女流国際棋戦で個人優勝
女流国際棋戦で個人準優勝計2回
国際団体勝ち抜き戦で3連勝

勝星による昇段

昇段するための勝星は細かく定義されている。

中国勢同士の対局で、段の差は二段以内の公式戦だけ昇段責務対局となる。

例えば、棋士が、段から段の棋士との公式戦は、昇段責務対局として有効。

棋士が、段から段の棋士との公式戦は、昇段責務対局として有効。

棋士が、段から段の棋士との公式戦は、昇段責務対局として有効。

昇段責務1局の勝敗に点数が与えられる。

1局の点数は以下の通り。プラスは相手より段位が高い場合、マイナスは相手より低い場合を意味する。

段位の差 勝ちの場合 負けの場合
2 80点 20点
1 85点 25点
0 90点 30点
-1 95点 35点
-2 100点 40点

平均点数=直近x局点数の合計/ x

直近x局の平均点数が一定に達すれば昇段する。平均点数の合格ラインと直近x局との関係性は以下の通り。

段位 平均75点で合格 平均70点で合格 平均67.5点で合格
初段 直近12局 直近16局 直近20局
二段 直近14局 直近18局 直近22局
三段 直近16局 直近20局 直近24局
四段 直近18局 直近22局 直近26局
五段 直近20局 直近24局 直近28局
六段 直近22局 直近26局 直近30局
七段 直近24局 直近28局 直近32局
八段 直近26局 直近30局 直近34局

複雑そうに見えるかもしれないが、実質、勝率62.5%前後を昇段基準として設定しているのである。

ほかに昇段大会もあるが、四段以下の若手棋士は責務対局の場が少ないため、主にこれを増やすために設けられた公式戦である。

終わりに

飛付き昇段の規定は、完全に国際棋戦の成績に直結する。国際棋戦をいちばん大事にするのである。

勝星方式の規定は、日韓の制度よりずっとハードルが高い。現役棋士は段位が実力を語る。

官子譜・まえがき 陶式玉

深草

「官子譜」とは元々過百齡先生が始め、その後曹元尊氏が編集した作である。膨大な内容で参考にはなるものの、整っておらずに残念に思う。己巳年の秋に、余は廣陵に泊まり、日々に呉瑞徵、胡安士両氏の勝負を観戦し、その一局一局の深読みの工夫や、取捨作戦の変幻自在に、まるで老婦と嫁から直伝の技であり、お二人は王積薪も上回る才能の持ち主であると感じた。その素晴らしき作戦の立て方と逆転力は、やはり筋を細かく読んで得られた力だろう。「物事は始め方の上手い者が働きかけ、創造力を持つ者が成し遂げる」と余は呟く。なので「官子譜」の旧作をとって丁寧に改訂し、当世の国手達の実戦譜の中から取り上げて足した、計千五百余りの譜が出来上がった。過百齡先生には及ばないが、内容はきちんと整っており、参考用として相応しいと自負する。これで碁の諸般の変化が尽きたとでも言えよう。

碁はあくまでささいな道義であるが、天地の理の全てをたとえるのである。石の強弱は、夏冬の輪廻。静と動は、陰と陽。戦況の変化は孫子。思慮深い熟考は、殷周の統治術。冷静の判断は賢人の頭脳。入神と座照は、仙人の境への通幽。政治の波に浮き沈み、前途多難の人生は、まるで潮の満ち引きのように、個々の事情にとらわれ、それでも世人はまず試みてから勝敗に問う。勝負はただ一着の違いで決まり、先を考えてから変化を捉えるため、一局全般が筋の良さに懸かるのではないか。作戦は人の芸によるものだが、棋道を進めるには度胸がいる。度胸のない者は、棋道も進められない。成功の一歩手前まで堕ちて失敗する小心者はいくらでもいる。費禕のように仕事を完璧にこなしながら碁に夢中し、謝安石のように戦場に臨みながら碁を打てるのは、まさに度胸が据わる人間達である。余は碁が上手ではないが、この本の出版に携わる決意をしたのも、自分の意志を固めるためであり、世の中の英雄たちも人生の困難を乗り越えるようと願いを込めて、誰かの役に立ちたいためである。

康熙庚午榴月(1690年6月)霍童山人存齋題


「官子譜」始自過君百齡、迄後曹子元尊起而刪定之、雖多適用、而法猶未備、識者憾焉。 己巳秋、餘客廣陵、 日觀呉子瑞徵、髭子安士對弈、其間用意之深微、取捨之變幻、似有得乎婦姑局外之術、而非如王積薪之僅可教以常勢者。 然出奇制勝、轉敗為功、毎從官子得力居多。 餘乃歎餘乃歎善始者之必善終、善作者之必善成一日。因取官子舊譜、細加厘定、增以國手對局之官子而翻新、以盡其數、共得一千五百餘局。雖不及見百齡全譜、而諸法畢備、用罔不臧、亦可謂盡弈之變矣。

夫弈、小術也。 而天地之理、無不寓焉。強弱互用一、寒暑之往來也。 動靜選居一、陰陽之依伏也。索情制變一、孫呉之兵法也。 思周行遠一、伊周之治功也。懲忿窒欲一、聖賢之律身也。入神坐照一、仙釋之通幽也。 至若宦海風波、世途荊棘、昇沈倏易、情態頓殊、天下事何者非弈而後逞?勝負爭於一著、變化妙於機先、則全域系於官子豈少哉!雖然藝以載術、而所以運道者、氣也。氣不先定、則道隨氣沒、而功不墮於垂成者幾何!費文偉之暇豫集事、謝安石之鎮靜臨戎、其氣蓋先定矣。 餘不善弈而輯是譜、將以定餘之氣、且以助天下英雄末路之先著雲爾。

康熙庚午榴月霍童山人存齋題

中国語棋書のおすすめ

こちらのツイートを見ました。

twitter.com

私はこのお店で本を購入した経験はありませんが、気軽に買えそうで良いですね。

そして色々と漁っていたら、中に自分が読んだことがある本はけっこう出てきました。

そもそも中国語を通じて囲碁を勉強することは難しいと思います。

なので解説が参考にならなくても役にたちそうな、死活、詰碁などを中心とするいくつの本を紹介します。

★付きは速攻購入おすすめです。


★囲棋死活1000題

囲棋死活1000題 9787810514293 王志鵬,賀君平著 北京体育大学出版社 [9787810514293 ] - 1,074円 : 激安中国語書店

ほかの方に既に紹介されたことはあるらしい。

20年前から今もほとんどの囲碁教室で使われている問題集です。子供達の必修科目です。私は勝手に「赤本」と呼んでいます。特に段位を目指す方は必ず解いて下さい。


囲棋教学習題冊

包郵 囲棋教学習題冊入門+入門初級+初級 3冊 胡暁苓 [9787500912392 ] - 1,836円 : 激安中国語書店

上の「囲棋死活1000題」に並び、多くの囲碁教室では王道の使用教材です。「入門」は石の取りから始める初心者のレベルですが、「初級」になると有段者レベル。手筋、攻め合い、基本死活、セキ、詰碁、布石、ヨセ。あらゆる碁のテクニックが含まれています。 中国語テキストの部分は読み飛ばしていいですので無駄は少ない。


★囲棋技巧大全

5折特恵 囲棋技巧大全 新修訂 [9787805508320 ] - 1,469円 : 激安中国語書店

「技巧大全」と名乗っているが、官子譜です。

日本で出版された官子譜のバージョンは、私が読んだことのある限り、呉清源橋本宇太郎両氏のものはありますが、いずれも勉強用に向いていないと思います。

この「技巧大全」は、原著の約1300問題を整理して攻合・死活・手筋などに分類し、出題のいくつの無意味な部分を訂正した箇所もあります。

官子譜をマスターする以上アマチュアにとって得なことはありません。そしてこの本は世界中のどれよりも質のいいバージョンであることを保証します。

ただ中国語の解説は読めないのと、このお店の値段はやや高めです。定価は約720円ですので。


囲碁発陽論研究 程暁流

囲棋発陽論研究 程暁流 9787500936985 人民体育出版社威爾文化図書専営店 [9787500936985 ] - 3,366円 : 激安中国語書店

発陽論のバージョン色々ありますが、この本も世界一です。

程暁流六段が書いた発陽論の研究は、時代の流れとともにいくつもあって、これが最新版で集大成なのです。

1問に対して平均50の変化図を出しています。アマチュアのために書いた解説本と捉えられます。

これだけの図があったら中国語が分からなくても読めるでしょう。もちろんガチで変化を追っていくとしんどいですが、並べるだけで上達につながります。

発陽論の解答に新発見が出たとか、話題になったりしますが、この本を調べれば既に書いてありますよ笑。この本の存在によって発陽論の全てが尽きました(120問目除き)。

院生やプロ棋士の方もこの本ご存知ないようで、ちょっとがっかりするくらいです。


★鬼手訣

5折特恵 鬼手訣 [9787805508771] - 765円 : 激安中国語書店

権甲龍氏の詰碁集ですが、「鬼手魔手」ではありません。続編のようです。中国のプロの卵たちが解いている様子を最近見たばっかりです。


★忍耐的計算力

忍耐的計算力 I [9787805508948] - 459円 : 激安中国語書店

忍耐的計算力 II [9787805508955] - 459円 : 激安中国語書店

忍耐的計算力 III [9787805508931] - 459円 : 激安中国語書店

権甲龍氏の詰碁集、「我慢の読み」です。

知名度は高いでしょう。なぜ日本で出版されていないのかは疑問です。


★龍之詰

5折特恵 龍之詰 葛玉宏囲棋道場 [9787557100438] - 765円 : 激安中国語書店

「なぜ中国に傑作と言える創作詰碁集はないか」という悲願で、プロ有志が作り出した1冊らしいです。激ムズです。

私は詰碁のことに無知なのであくまで個人の意見としては、作品形は奇抜的ではなく、スカスカな石配置で芸術性を勝負するイメージです。難しさは一番な売りでしょう。30問あります。


発陽新論:詰棋名家名作

発陽新論:詰棋名家名作 [9787805509129] - 887円 : 激安中国語書店

孫志剛三段が囲碁天地に投稿していたコラム集です。日本の詰碁作家の紹介です。内容はテキスト多めで、いくつの作品を取り上げた構成です。


中国囲棋古譜精解大系 シリーズ

中国囲棋古譜精解大系-西屏戦梁程 [9787508632933] - 2,999円 : 激安中国語書店

陳祖德九段解説の中国古碁大系。計14冊あります。中で一番オススメなのは「当湖十局」ですがこのお店にはなくて東方書店さんにあります。中国語の解説が読めないとただのコレクションになりますが、かけがえのない傑作です。中国の囲碁ファンが読まないと失格のレベルです。


囲棋死活訓練

囲棋死活訓練 [9787546413662] - 704円 : 激安中国語書店

このシリーズ(初中高3冊あり)は良いですが、ほかの詰碁集と被っているというか、元々別の所から集めた問題集です。特に「高級篇」はほぼ昭和の創作詰碁です。


紹介は以上となります。この記事を書くためにお店を全部チェックしましたから、言及していないものは大丈夫でしょう。

ほかにお店にないが、おすすめしたい本は「天龍図」と「AI囲棋定式大全(江維傑著)」です。いつか掲載するか、あるいは購入代行が使えればといいですね。

春蘭杯李維清vsパクジョンファン戦から見るダメ半コウの攻防

この記事の内容は、主に胡耀宇八段の解説を参考にしたものです。

この1戦の棋譜はこちら。

kifudepot.net

中盤の進行も詳しい検討に値する大熱戦だったが、本記事では特に白282以降の半目勝負についてまとめた。

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82=282以下同 

左下のコウは1目の価値があり、勝負所だ。白としては、例えこのコウに負けても、右にダメ半コウの粘り作戦も残っているので、82とコウ立てした。

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1-14 

黒1と受けた場合、以下にAのコウの手順は黒勝ちになるが、白には10の仕掛けを持つ。以下、勝敗はダメ半コウで決まる。

白14までダメ半コウが出来上がる。一見コウ材の数は黒有利だが、右の地に悪い味がする。

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14-16 

白16は妙手。黒A、白Bでは、ダメが詰まって天下コウになってしまう。それにB、Cは両コウでありコウ立ては無限。よってダメ半コウは白必勝なのだ。

これで黒1と受けてはいけないと、両者ともに分かっていただろう。実戦に戻る。

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83-84 

黒83!この手はどういう意味だ?

白は84とコウを取り返す以上、黒にAを戻されてもまた白Bが打てるのではないか。黒はコウ材の損でもしたか。

まさか黒83は逆転の一手であることを、白は知らなかっただろう。実は84が敗着だった。

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84-86 
84、86と白は左のコウをツグ。黒はコウを譲り、盤面7目に決めた。今回は黒からダメ半コウを仕掛ける。

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86-89 
89以降白がAのコウを取る。コウ材の数を数えると、黒はBに3枚、Cに6枚、Dに1枚、計10枚。白はE、F、Gの3枚。6つのダメは白のコウ材3枚と見なしても、黒には勝てない。

プロ棋士にとって、ダメ半コウは難解とは言えないだろう。しかし日韓の棋士は今までよく躓いてきたのは、実力というより、認識のほうが足りていないからではないか。価値の計算には無理がある。中国ルールは実際、「双方手数均等」というルールが含まれている。相手に手番をパスさせて得する手段なのだ。

「中国ルール特有」と言われているダメ半コウは、碁の奥深い変化に生まれる、ごく自然な現象である。「コウ材は実利である」という格言を是非覚えて頂きたい。その裏に特殊性ではなく、一般性を現しているのは、私の主張である。

中国ルールのうんちく(1) ~整地

仮に361枚の1円コインはテーブルにあって、2人がそれを取り合うゲームとする。全てのコインが取られた時点でゲームは終了。

両者が取ったコインは勿論、合計361円である。片方の数がわかれば、相手の数も次第にわかる

中国ルールの下に囲碁は、まさにそういったゲームである。盤上に361の交点があり、全ての交点が配分され、多く取れた方が勝ちである。囲んだ地足す生き石は自分の領有になり、片方の領有を数え、半分である181.5単位と比較すれば勝ち負けはわかる。整地しやすい、四角っぽい側を選べばよい。

では終局後、具体的にどういうふうに整地するのか。実際に操作の段取りを見てみよう。

こちらは第2回夢百合杯決勝第5局、柯潔vs李世乭。碁盤の交点は計361単位。

kifudepot|柯潔-李世乭 第2回夢百合杯世界オープン戦決勝五番勝負第5局

①まずは盤上の死に石をすべて取り除く。アゲハマという概念は中国ルールにないので埋まりなどは不要。

白陣のほうが視覚的に整地しやすいが、今回はあえて難しそうな黒陣を数える。

黒石と白石は等価交換できる(ここは日本ルールと同じ)。

必ず10目単位で四角い空き地に整える。これを実現するために石を自由に入れたり外したりする。これで空き地は110単位になる。

③残りの石を、わかりやすいように10個ずつ並べる。最後に端数があっても数えやすい。

黒石は計75個

*図では映えの都合で、白石は一部消えている。


②と③によって、黒は合計185単位であり、コミを引いても361の過半数を確保したため黒の勝ちとなる。

以下に整地する時の注意点:

  • 日本ルールと違い、地を空けるために石の入れ加減はできるし自由だが、いざ空き地を②で決めると、③にて石の数は確定である。

  • 向こうの陣地はさほど重要ではないが、③の前に形のままであったほうがよい。②で空き地を10の倍数でキレイに作るために、相手の領有と同じ数を交換する場合はよくある(日本ルールと同じ)。

  • トラブルが生じないよう、②が終わったところ、必ず碁盤外のテーブルにある全ての同色石を片付けておくこと。

19路盤ではコミは3.75単位である。7目半に相当する。 よって黒が184.25単位、もしくは白が176.75単位を超えると勝ちである。 整地後の結果をいち早く確認するのに、「黒185、白177確保」と覚えておけばよい。

セキの場合は、全てのダメは二分され、両者に充てる。


中国ルールの長所と短所は、整地の仕方から見れば分かる。

アゲハマ不要で、盤面の状況だけで勝負結果がはっきり分かるのは、中国ルールの長所である。アゲハマの会計は大変でトラブルのもとになりやすい。

整地によって盤面の形が完全に破壊されてしまうことと、操作の時間が長いことは、中国ルールの二つだけの短所と言える。ただし現在スマホを使ったら写真で自動的に勝負結果を示すアプリがあり、とても実用的で時短にできる。

ちなみに中国ルールでの整地は大会では対局者同士でするのではなく、審判がするのである。「整地は対局の一部」という考え方はない。

中国ルールのうんちく(3) ~ダメ半コウを徹底解説

中国ルールには、実質的に両方の着手均等という原則が含まれている。すなわち最後の手は必ず白番が打つことになる。着手均等ということで、どちらが1回パスすると1目の損をする。

ちなみにアメリカのAGAルールでも、着手均等原則があって、パスするとアゲハマ1目を渡すのだ。

最後の半コウ争いを迎える局面では、コウ材有利の方はダメの詰め合いの進行で、相手をパスさせて有利にすることがよくある。

成功した場合は1目の得をするから、半目勝負の局面ならば大逆転の可能性がある。


黒1白2の後、黒3とダメを詰める。コウを取られたらコウ立てして取り返すという黒の抵抗手法だ。

仕掛けを受ける側は、ダメヅマリをコウ立てにできる。

ダメが奇数あるのは、ダメ半コウを仕掛ける前提条件だ。

そもそも受ける側は、もし偶数のコウを作ることが可能ならば、相手によるダメ半コウの仕掛けがなくなる。

例の進行手順を見ていこう。

黒1、3、5はいずれも両先手のコウ材だから、先に交換しておくことが大事だ。

先に黒1の交換をしないと、白に1とホウリコんでコウ材を作られてしまうので、黒1から5までの手順は間違ってはいけない。

先に5と打つと、またコウ材の損をする。

大体黒が仕掛ける側であれば、白は先に手抜きしてコウを解消するので以上の交換はまず成立しない。

要するに優勢でダメ半コウを仕掛けてきそうな場合、1目の小ヨセより、半コウを解消したほうがよい。

実戦におけるダメの詰め合いの進行をめぐって、仕掛ける側はコウ材の増やし方や相手コウ材の減らし方など、様々の筋は現れるはずだ。コウ材の数は実利なのだ。

相手が仕掛けてきたら対処法は?

ダメの詰め合い進行によって、相手のコウ材を減らすことがいちばん大事だ。

先に黒1から3とダメを詰めてコウを取るのは筋。

コウ立ての受け方も大事。完璧な手順が求められる。

二段コウ、もしくは以上

ダメ半コウの争いによって、1目以上の得をする可能性はあるが、実戦には滅多に出ない状況だ。

小ヨセの進行に戻って考察しよう。 以下、コウを取る手番は「持つ」と言う。

多数の半コウが盤上にある

  1. 半コウ2つを持つ局面。

黒番が勝勢側であれば、コウを取ってもよい。

黒番が敗勢側であれば、ダメを詰める。こうして1つ目のコウを解消して、2つ目で争おう。先にコウを取ってしまったらおしまいだ。もちろん白番の立場としては早めにコウを解消した方がよい。

  1. 半コウ3つを持つ局面

黒がダメを詰めると、コウ1つ解消してくきて1つを取るとよい。

先に黒がコウを取ると、残りの2つは一人ずつ解消するから、これでコウ1つの状況と同じことになる。白にダメ半コウを仕掛けられる可能性が生じるのでよろしくない。

従って、半コウ3つを持つ場合、やはり取らない方が無難だ。

以上でわかること

  1. それぞれのコウを両方が持ち合うと、コウが存在しないことと同じ。
  2. 片方がコウ3つを持つ以上、コウが存在しないことと同じ。

「3の倍数」でわかること

盤上にある半コウは3つずつ解消されるので、イコール0、1、2でしかない。

  • 半コウ=0 3つずつ解消すればよい。

  • 半コウ=1 コウを持つ側は、取るとよい。しかし相手の番であれば、仕掛けられる可能性がある。

  • 半コウ=2 コウを持つ側は、仕掛けていく可能性がある。相手の立場としては、早めにコウを解消した方がいい。

以上。

  • おまけ

仕掛けずに終わる万年コウ

右下に黒は3目ある。

最後にダメを詰め尽くしてからコウを取るので、白をパスさせてコウを解消することができる。

「取らず3目」

「隅の曲がり四目」と同じように、盤上にある全てのコウ材を解消してから、白は1から3とマガるのは筋だ。

中国ルールのうんちく(2) ~コミ出しとセキ

  • コミ出し

中国ルールでは、片方が181.5を超えると勝ちである。

それにコミは7目半に相当する。黒は単位が184.25を割ると負けである。

まずセキはなしで、一局最後のダメヅマリの状況を見よう。

地合い 最後にダメを詰めたのは 黒の単位
盤面6目 184
盤面7目 184
盤面8目 185

結論その1:半目勝負の場合、最後にダメを詰めた方が勝ちだとすぐにわかる。

これは日本ルールの場合と真逆である。コミが異なるから当然だ。

盤面8目の場合では、黒が最後のダメを詰めて1目の得をするが、勝負に影響はない。だから、小ヨセに於いて、ダメヅマリと1目のヨセが見合いとなることはある。

  • セキにはいろいろな形がある

中国ルールの勝負結果は、日本ルールと違う可能性は当然ある。

では具体的どのように違うのか。

  • 欠け目

欠け目は普通、最後に手を入れるので、地にならない。

しかしセキの欠け目では、手入れの必要がない。手入れのない目は、やはり地である。

結論その2:セキの欠け目は、地に相当する。中国ルールの場合は計算に入れる。

  • 眼あるセキ

中国ルール9条:両者の活き石の間のダメは、折半してそれぞれの単位に分ける。

眼なきセキの形では、ダメ2単位の半分を両方がもらうので、何も変わることはないが、

眼あるセキの形では、両方がともにダメ1個の半分、0.5単位をもらう。これでレアな状況が生じる。

(セキの場所は奇数に限って)眼あるセキの場合は、地合いはめいめい異なる。

地合い 最後のダメ詰 黒の単位
盤面6目 183.5
盤面7目 184.5
盤面8目 184.5

上の表と比較してわかったのは、勝敗の変わり目が盤面6目と7目の間に移った。白番が確保するはずの1個のダメが、折半されることになった、とも言える。

結論その3:眼あるセキの場所が奇数あると、黒は1目得をするとみなしてよい。

  • 眼なきセキ

ひと目でセキとわかる形だが、なかにダメは4つもある。

黒はどのダメも詰められないが、白はダメ2つも詰める権利がある。

よってここのダメは折半されるのではなく、白に隠れの2単位がある。

結論その4:片方しか詰めることができないダメは、片方の地である。

終局までに残しておくのだが、最後に詰めることはお忘れなく。忘れて詰めずに終局してしまうと、折半されてダメになる。

以上4つの結論は、形勢判断をする時にお役に立つとよい。