春蘭杯李維清vsパクジョンファン戦から見るダメ半コウの攻防
この記事の内容は、主に胡耀宇八段の解説を参考にしたものです。
この1戦の棋譜はこちら。
中盤の進行も詳しい検討に値する大熱戦だったが、本記事では特に白282以降の半目勝負についてまとめた。
左下のコウは1目の価値があり、勝負所だ。白としては、例えこのコウに負けても、右にダメ半コウの粘り作戦も残っているので、82とコウ立てした。
黒1と受けた場合、以下にAのコウの手順は黒勝ちになるが、白には10の仕掛けを持つ。以下、勝敗はダメ半コウで決まる。
白14までダメ半コウが出来上がる。一見コウ材の数は黒有利だが、右の地に悪い味がする。
白16は妙手。黒A、白Bでは、ダメが詰まって天下コウになってしまう。それにB、Cは両コウでありコウ立ては無限。よってダメ半コウは白必勝なのだ。
これで黒1と受けてはいけないと、両者ともに分かっていただろう。実戦に戻る。
黒83!この手はどういう意味だ?
白は84とコウを取り返す以上、黒にAを戻されてもまた白Bが打てるのではないか。黒はコウ材の損でもしたか。
まさか黒83は逆転の一手であることを、白は知らなかっただろう。実は84が敗着だった。
84、86と白は左のコウをツグ。黒はコウを譲り、盤面7目に決めた。今回は黒からダメ半コウを仕掛ける。
89以降白がAのコウを取る。コウ材の数を数えると、黒はBに3枚、Cに6枚、Dに1枚、計10枚。白はE、F、Gの3枚。6つのダメは白のコウ材3枚と見なしても、黒には勝てない。
プロ棋士にとって、ダメ半コウは難解とは言えないだろう。しかし日韓の棋士は今までよく躓いてきたのは、実力というより、認識のほうが足りていないからではないか。価値の計算には無理がある。中国ルールは実際、「双方手数均等」というルールが含まれている。相手に手番をパスさせて得する手段なのだ。
「中国ルール特有」と言われているダメ半コウは、碁の奥深い変化に生まれる、ごく自然な現象である。「コウ材は実利である」という格言を是非覚えて頂きたい。その裏に特殊性ではなく、一般性を現しているのは、私の主張である。